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トレーサビリティ=安心+安全

本日、ある会合で「トレーサビリティ」の定義が視点によりとっても異なることを発見しました。
例えばある農学部系の方は安全重視。「安全」は科学だが、「安心」は科学できない、と。
これは、遡及・追跡機能を実現するトレーサビリティシステムでも、遡及に着目してきた自分
とはずいぶん異なり新鮮でした。ディシプリンが違えば視点が違うということを聞いたことは
ありましたが、まさに実感、「なるほど、そういう見方もあるのか」というのが素直な感想です。
その会合では、食品トレーサビリティの議論が混乱を招いていたんですが、その原因はこ
れまでの農水省のトレーサビリティ実証実験で、?生鮮食品のトレーサビリティでは「顔が見
えるトレーサビリティ」つまり「安心」が中心に語られ、?加工食品のトレーサビリティでは「食
品衛生」つまり「安全」が中心に語られてきたという点です。
個人的な見解ですが、問題の根本は、農水省のトレーサビリティシステムの目的が明確に
定義されていない(少なくとも会合メンバーでシェアされていない)ことにあったように思いました。
e-Japan戦略?の文脈で考えれば、トレーサビリティは、「安心・安全な社会作る」社会シス
テムのひとつと位置づけられます。したがって、安心と安全の双方を担保するシステムでなけ
ればなりません。
ただし、安心と安全は分けて考えるべきものです。安全は安心の大前提ですが、安心は安全
が達成されれば達成されるというものではありません。だから私はトレーサビリティシステムを、
基本的には、安心を担保する情報開示システムと、安全を担保する品質管理システムから
成ると考えています。双方を追及する必要があります。
ここで、元SE的視点になりますが、金銭的・時間的制約のあるシステム開発PJでは、システムの
目的にあわせて開発に優先順位付けをする必要がでてきます。トレーサビリティシステム開発も、
どちらを優先するかが、事業ごとに異なって然るべきです。農水省のこれまでの実証実験も、
こうした視点で整理してみれば、次回は議論の糸口が探れるのではないかと思いました。
トレーサビリティは「可視化」(visibility)を実現します。経営学的にいえば、従来は管理でき
なかったモノ・コトを管理可能にする→無理・むら・無駄をなくなる→効率化を達成→経済的利益
とつながります。
トレーサビリティを実現する技術のひとつがRFIDです。RFIDはSCMの効率化で注目されがち
ですが、情報開示・品質管理でも大いに有効です。実は、同じSCMシステムも見方を変えれば、
品質管理ということもできます。RFIDで実現するSCMは「個別のモノ」がどこにいったか履歴
を取るシステムなので、食品ハザードがあった際に、ピンポイントでリコールをかけることを
可能にします。安全を担保する品質管理システムであり、公表することで消費者に漠とした
不安を与えずに済むので、安心を担保するシステムということができます。
長々とかいたので、そろそろ店じまいしますが最後に注釈。
すでにお気づきかもしれませんが、品質管理システム、情報開示システムというとき、私は
「システム」をかなり漠然と広い意味で使っていました。工場内の品質管理ソフトウェア、情報
開示Webシステムというレベルではなく、人間系システムも含めています。
そうそう、情報開示は企業活動では「アカウンタビリティ」です。これについても、今日の議論で
これまで以上に重要だと思う確信を強めたのですが、これは別の機会に書いてみたいと思います。

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2004年10月01日 02:37に投稿されたエントリーのページです。

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